最近の投稿
最近のコメント
    カテゴリー
    • カテゴリーなし

    風俗ねぎ姉さん所沢

    窓の下には、色あせた写真が何点かおかれていた。題材は、捕鯨船の乗組員、口ひげを生やした熟練甲板員、いかめしいひげづらの船長を讃仰のまなざしで見つめている歯のない原住民、といつたところだ。一方の壁には、話、詰め物をした鯨の剥製、網、海難救助用の鈎な(かぎ)どがかけられ、その下に長いマホガニーのカウンターが伸びている。テーブルにはピクニック用の硬い長椅子が使われていた。ガラス戸をはめたウォルナットの書棚もいくつかおかれ、そのなかに船の測程俵や船乗りの日記が陳列してあった。二階には突き出る恰好になったバルコニーがあり、そこから一階のどんちゃん騒ぎを見下ろすことができた。この館の小部屋では、ごくありふれた船乗りたちが何人も息をひきとったのだろうけれど、いまはドアもちようつがいからとりはずされ、そこがブースになっている。カウンターの中ほどに立って階段を見上げると、天窓をとおして夏至の空にかがやく星が眼に入る。六分儀があれば自分のいどころがわかり、街頭の標識など必要ないというわけだ。風俗 所沢とは言いつつも店で用いられている木はすべて、老朽した梁の褐色に合わせて色づけされていた。所沢とのことで昔ながらのあたたかい黄金色の光が、古びたシャンデリアから降りそそいでくる。デザインに凝った部分はひとつもなかった。誰かがここに足を踏み入れ、ぐるつと見まわして、このままで十分と断を下したのだ。この低俗な時代なら、それが趣味のよさとしてとおってしまうだろう。手入れの悪い肌をした鈍そうな女が、入口で金の説明をしていた。わたしをちらりと見ただけで、女の眼はたちまちうるんだ。「なかに入って楽しんでったら?お盆がまわってきたら、いくらか協力してくれればいいのよ」異次元の世界にまちがえて入り込んでしまった。滅びたトレンドの墓場から現われてきたのは、滅びる前でさえもっとも忌み嫌われていた生き物たち、文学少年と文学少女だった。

    カテゴリー
    • カテゴリーなし
    お気に入り